ラノベ 江戸時代に転生してみた。

江戸時代に転生してみた。1

第一話:転生したら未来でもなく異世界でもなく

1.俺の人生は、あっけなく終わった。

夜遅くまで残業し、疲れた頭で帰宅する途中、突然目の前に現れたのは猛スピードで突っ込んでくるトラック。

咄嗟に避けようとしたが、間に合わなかった。

──ドンッ!

意識が闇に包まれ、気づけば俺は白く輝く神聖な空間にいた。

目の前には、一人の神々しい美貌の女神が浮かんでいる。

まるでゲームのオープニング画面のような美しさだ。

「......可哀想に……。過酷な人生でしたね。」

涙を流しながらそう言う女神。

これは……もしや……!

俺は即座に察した。

「これ、異世界転生フラグじゃないか?」

死んだ後に異世界へ転生する。

最近流行りの、俺も大好きなパターンじゃないか!

俺はワクワクしながら、期待を込めて女神に尋ねた。

「もしかして……異世界に転生させてくれるんですか!?」

「あなたに最高の来世をプレゼントしましょう。」

やった!!!

剣と魔法のファンタジー世界!無双できるチート能力!

新しい人生が待ってるぞ!!

俺はワクワクしながら、女神の言葉を待った。

「それでは、行ってらっしゃい。」

女神の微笑みとともに、俺の意識が再び闇に包まれる──。

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2.ここはどこ!?

次に目覚めたのは、ボロボロの布団の上だった。

見渡すと、狭い部屋。薄暗い木の壁、藁の敷かれた床。

そして、かすかに聞こえてくる……。

「べらぼうめぇ!おめぇさん、今月の家賃払ってねぇじゃねぇか!」

何だこの江戸っ子みたいな話し方は!?

俺はガバッと飛び起きた。

「えっ、なにここ!?」

扉がバン!と開かれ、入ってきたのは青い着物を着たひげオヤジ。

顔は日に焼けていて、まるで時代劇とかで見る江戸時代の町人のよう。

「おぅてめぇ、起きたんだったら働きに行けぃ!江戸の長屋じゃ、働かねぇヤツは生きていけねぇんでぃ!」

「え、江戸!?えっ、待って、え、異世界じゃなくて!?」

どうやらひげオヤジはこの長屋のオーナー的な存在らしい。

俺はパニックになりながら、自分の姿を確認する。

……着物。

……帯。

……髷(まげ)は結っていないが、完全に江戸の庶民の服装だ。

俺は愕然とした。

「え、江戸時代に転生した!? え、異世界じゃない!? え、来世って言ってたのに未来ですらない!? え、過去!?」

あの女神、話が違うぞ!!!


3.他の住人

とにかく落ち着こう。

今のところ、わかったことは以下のとおりだ。

どうやら俺は江戸時代に転生した。

どうやら長屋に住んでいる庶民らしい。

異世界じゃない。未来ですらない。

……終わってる!

なんのチートスキルもない!ただの一般庶民じゃねえか!!

俺が頭を抱えていると、隣の部屋から謎の男がやってきた。

「フッ……ついに私の力を示す時が来たか……。」

出てきたのは、派手なマントを羽織った男。

髪は金髪で、腰には剣を差している。

「何者だ……?」

俺がシリアスな顔で尋ねると、男は胸を張って宣言した。

「私は! 勇者だ!!」

「は?」

男は得意げに笑いながら、剣を構えた。

「我が魔法をもって、この世界を救う!!」

「え、魔法あんのここ!?」

勇者(自称)は手を天に掲げ、低く、荘厳な声で詠唱を始める。

「……聞こえるか、この遠雷の囁きが。」

「我は雷を統べる王なり。我が魂は蒼天に轟く咆哮と共鳴し、雷神の裁きを下す!」

「星々の誕生より続く、無限の鼓動よ!」

「虚空を裂き、天空を駆ける雷霆の神よ!」

「幾千億の雷鳴を束ねし、混沌と秩序の双刃よ!」

「天空の支配者よ、神罰を執行せよ!」

「雷鳴は我が意志! その咆哮は天地を貫く剣!」

「世界を震わせる絶対雷撃の化身よ……!」

「今こそ降臨せよ!!」

「轟雷神滅(ごうらいしんめつ)!!」

「神槍・ヴォルト=ゼウス!!」

「……?」

勇者は数秒間、沈黙した。

そして、何かを考えるような顔で静かに剣を鞘にしまう。

「……この世界には魔力がないのか。」

「無駄になげぇ詠唱中にわからねえもんなの!?」

だめだこいつ.....早くなんとかしないと……。

俺が頭を抱えていると、今度は背後から機械音声が聞こえてきた。

「転生者を確認。私は22XX年から来た高性能AI搭載タヌキ型ロボットです。」

振り向くと、そこには青いタヌキ型のロボットが立っていた。

ネコ型じゃねえんだ!? ロボットって転生するんだ!?

「環境スキャン開始。この時代の文明レベルをスキャン中。――完了しました。 結論:低すぎる。絶望しました。」

「言い方ァ!!」

俺が絶望していると、今度は背後から上品な声がした。

「ここが、わたくしの新たな居城.......というわけですわね.....。」

振り向くと、そこには金髪縦ロールの派手なドレス姿の女性がいた。

貴族っぽい女性は、パンパンと手を叩き、

「セバスチャン、ティータイムの用意をしなさい。..............あら、いないようね。」

「ところでそこのあなた、ここはどこなのかしら?」

俺は思わず後ずさる。

え、なんか怖いんだけどこの人……。

「え、江戸......だと思いますけど.....。」

すると彼女は大げさにため息をつき、扇を広げながら言った。

「はぁ、こんな庶民の暮らし……わたくし、耐えられませんわ!」

「いや、悪役令嬢江戸に来ちゃった!?」

........やっぱりまともなやつがいない。

俺は深いため息をついた。


4.絶望の幕開け

俺は頭を抱える。

「魔法が使えない勇者」

「文明を見下すAIタヌキロボ」

「庶民文化を拒否する悪役令嬢」

もう、この時点でまともに機能しそうなやつがいない。

しかも、俺は普通の人間。

この世界で、こいつらとどう関わっていけばいいんだ……!?

こうして、俺のカオスすぎる江戸時代転生生活が幕を開けた──。



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