ラノベ 無限の5分

『無限の5分』~寝起きの「あと5分」は本当に5分で済むのか?~4

『無限の5分』4

1. 困惑

ヤマトの手から青白い光が放たれる。

サカキは放たれた光を躱そうとするがギリギリのところで腕をかすめてしまう。
――そして気付いた時には、腹部にヤマトの拳がめり込んでいた。

「ぐっ……!」
サカキがよろめき、ヤマトは楽しそうに笑う。
「どうした?こんなの簡単に避けられるだろ?」

「くそ……!」
サカキは再び構え直すが、ヤマトの次の攻撃も同じ結果だった。青白い光が体をかすめたかと思った瞬間、すでに殴られている。

「なんだ……これは......!」
サカキは額に汗を浮かべながら、何度も殴られる自分に苛立つ。

一方で、アヤカは冷静にその様子を観察していた。ヤマトの光がアヤカに向けられることはなく、ただサカキが一方的に攻撃を受けている光景が続く。

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2. 違和感

「なんで避けようともしないの……?」
アヤカはその場で小さく呟いた。
彼の放つ青白い光はサカキの視覚を奪うほど眩しいわけではない。
目の前でサカキが攻撃を受ける光景には、ある種の違和感があった。

ヤマトが拳を振り上げても、サカキは全く反応せず、ただ無防備に攻撃を受けている。避けようとする素振りすら見えない。

「どういうこと……?」

アヤカの頭に、これまでの記憶がよぎる。私たちに何度も『5分』を繰り返させた青白い光の存在。そして、ヤマトの手から放たれる同じ色の光。

「もしかして、時間を......止めている......?」
アヤカは、ヤマトの攻撃を観察し始めた。

「でも、それだけじゃわからない……条件はなに?」
アヤカは視線をサカキに移しながら、考察を進める。
「青白い光を当てられた直後……一瞬だけ動けなくなっている?」




3. ヤマトの力

ヤマトが放つ青白い光がサカキの体をかすめる。その直後、サカキは無抵抗で攻撃を受ける。

「やっぱり……あの光を当てられると、サカキの時間が一瞬止まる……だからサカキは避けられないんだ。」
アヤカは確信に近い推測を得た。ヤマトの光には、相手の時間を一瞬止める能力がある。そのため、サカキは自分が停止していることに気付かず、反応することも出来ず殴られてしまう。

ヤマトはアヤカの表情を見て、楽しそうに言った。
「ほう、そっちの君は気付いたか?」

アヤカはヤマトを睨みながら口を開いた。
「青白い光を当てた相手を、短時間止める……それがあなたの力ってわけね。」

ヤマトは肩をすくめて笑う。
「ご名答。この力は【瞬間停止-スティルモーメント-】。光を当てた相手を1秒間停止させる力だ。しかしどうする?見たところ、こっちの彼はまずその光すらも避けられないようなんだが。」

「くっ.....この野郎.....!」
サカキは、がむしゃらにヤマトへ殴りかかる。
しかし、ヤマトはすぐさま【瞬間停止-スティルモーメント-】を放ち、サカキにカウンターを繰り出す。

「ぐっ.....!」

ヤマトの重い拳を受け、サカキは堪らずうずくまる。

「そんな.....こんなの......戦いにすらならないじゃない.....。」
しかし、そんなアヤカの焦燥とは裏腹に、サカキの中の炎はいまだ消えてはいなかった。




4. 片鱗

幾度となく繰り返される光と攻撃の応酬。
しかしある時、閃光がサカキを捉える瞬間、サカキはわずかに体を傾け、光をギリギリのところで躱した。

「なに……!?」
ヤマトが驚きの表情を浮かべる。サカキ自身も、信じられないというように自分の手を握りしめた。

「今の……躱せたのか……?」
自問するような声を漏らすサカキ。しかしすぐさま、ヤマトが次の攻撃を放つ。光が再びサカキの方向に向かって飛ぶ――。

だが、サカキはまたもや光の軌道を見切るようにして、寸前で回避した。

「おいおい、マジかよ……」
ヤマトは面白そうに口元を歪める。その目は、挑発ではなく本物の興味を宿していた。

「【瞬間停止-スティルモーメント-】をかわした……?」
アヤカは息を呑みながら呟いた。
「何が起きているの……?」

次々と放たれる青白い光。サカキは何度か攻撃を受けながらも、1回、2回と、いくつかの光を確実にかわし始めていた。

「これは……偶然ってわけでもなさそうだな。」
ヤマトは低く笑い、手を一度下ろし、言った。

「......始まったか、覚醒が。」

その目は鋭く、サカキを見据えていた。



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