『無限の5分』2
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1. 出会い
サカキは、あの5分間の無限ループから解放され、至って普通の日常を送る高校生として過ごしていた。しかし、あの「5分」に囚われていた記憶は、夢と現実の狭間のように曖昧で、平穏な日々の中で少しずつ薄れつつあった。
ある日の放課後、校門を出たサカキは、一人でベンチに座り、じっと腕時計を見つめている女子生徒に目を留める。その表情にはどこか疲労と苛立ちが滲んでいた。

―――彼女は、ため息交じりに小声でつぶやく。
「…あの5分はいったい.....。」
その言葉にサカキは息を呑む。自分の体験と似ていたからだ。
5分という言葉だけで同じ体験だと決めつけるのもどうかとは思うが、どうしても気になり話しかけてみることにする。
「もしかして…君もあの『5分』に囚われたことがあるのか?」
失敗した。我ながらとんでもなく恥ずかしいことを言ってしまった。そう思いながら彼女の返事をうかがう。
サカキの問いに、彼女は一呼吸置いてから
「何それ?」
と、まるでゴミを見るかのような目でそう答えた。
その冷たい反応に少し戸惑いながらも、話しかけてしまった手前、サカキは夢の中での体験という事にして語り始める。すると彼女の表情に微かな動揺が見えた。
2. 同じ経験
「……あなた、本当なの?」
彼女は半信半疑の様子で尋ねる。彼女はサカキの話を聞きながら、自分の体験と照らし合わせていた。自分が抱えている秘密を知られたくないのか、彼女は距離を置くような態度を崩さない。
「私の名前はアヤカ。私も、似たような経験をしたことがある。でも、あなたに話す義理はない。」
それでもサカキの真剣な表情に、アヤカは少しだけ自分の話をする気になった。
「何度も同じ時間を繰り返すの。時計の針が動かない世界で、『5分』が永遠に続く。最初は混乱したけど、次第にその静寂が不気味に思えてきた。」
アヤカの話は、サカキの体験と驚くほど似ていた。しかし、アヤカはサカキに対して完全に心を開いたわけではなく、話の途中で口を閉ざしてしまう。
「これ以上は言わない。信じるかどうかは勝手だけど、変に近づかないで。」
サカキは戸惑いつつも、アヤカの冷たい態度の裏に、何か隠された思いがあるのではないかと感じる。
3. 新たな異変
翌朝、サカキは学校に向かう途中で再び違和感に気づく。時計の針が一瞬だけ止まり、次に動き出したとき、いつもの景色がどこか薄暗く感じられた。
同じくアヤカも学校で奇妙な現象に遭遇していた。時間が歪むような感覚、一瞬だけ止まったように見えるクラスメートたちの動き――。昼休みにサカキとアヤカは偶然再会し、サカキが話しかける。
「また一瞬時計の針が止まるような感覚があった。これ、きっと俺たちの問題がまだ解決していないってことだ。」
アヤカは少し迷いながらも答える。
「……私にも似たようなことが起きた。でも.....だから何なの?」
「一緒に調べないか?俺たちにしか分からないことがあると思う。」
「別に、あなたに協力する義理はないんだけど。」
アヤカの塩対応は相変わらずだが、その態度の裏には、サカキの提案に少し興味を抱いている様子が垣間見えた。

4. 再会
終業のチャイムが鳴り、サカキが帰り支度をしていると、時間停止の感覚とともに、廊下の奥から冷たい風が吹き抜けるような感覚に包まれる。
空気が重くなり、空間全体が静まり返る中、アヤカが駆けつける。
「これって!」
アヤカは教室のドアにもたれかかり息を整えながらそう言った。
すると、サカキとアヤカの間の空間が揺らぎ、そこから再び青白い光が現れる。
光は以前よりも冷たく、不気味な雰囲気を漂わせていた。
「お前たちの試練はまだ終わっていない。」
青白い光の言葉に、サカキは怒りをあらわにし、問いかける。
「お前の目的はなんだ!そもそもお前は何なんだ!敵なのか、味方なのか!?」
光は答える。
「それを決めるのは私ではない。」
アヤカも光に向き合うが、その表情は冷静だ。
「試練って、どうせまた無限の時間に閉じ込めるだけでしょ?そんなの、、、もう慣れたわ。」

「お前たちが真理にたどり着いたとき、私はお前たちに立ちはだかるだろう。」
そう言い残して光は消えていき、その場には不穏な静けさだけが残った。
5. 違和感と決意
青白い光との再会は二人に不安を抱かせる一方、真実を探る決意を促した。サカキは言う。
「俺たちが動かなければ、俺たちはまた無限に5分を繰り返すことになる。」
「まあ、あなた一人で何かするよりは、マシかもね。」
アヤカは少しだけ表情を和らげるが、警戒心は解かない。
二人は放課後の学校に残り、異変の痕跡や青白い光の正体を探るため行動を始めた。
―――静まり返った旧校舎。
規則的で、重く、響く足音。それはまるで意図的に自らの存在を誰かに示そうとしているかのようだった。
薄暗い廊下の奥、光と影が交差する場所で人影が揺れる。